函館市国際水産・海洋総合研究センター(弁天町)は、大型実験水槽で実験中のヤリイカの産卵行動を公開している。約20匹のイカが放たれ、群れをなしてゆったりと泳ぐ様子や縄張りを巡る雄同士の威嚇行動、房状の卵塊などを確認でき、間近にイカの群れを見ることができる貴重な機会となっている。
冬から春にかけて産卵時期となるヤリイカの実験は昨年の同時期に続いて2回目。容量約300トンの大型水槽を使い、4月21日から今月12日までの日程で、イカを入れ替えながら観察を続けている。
実験を行う北大大学院水産科学院資源生態学研究室の修士1年時岡駿さん(22)によると、3日現在の約20匹の群れには5匹の雄がおり、そのうちの体の大きな1匹が産卵礁の近くを縄張りとして、水槽の約半分を〝占拠〟。近づく他の雄を追い払う様子や、雌を産卵礁に誘導しようとする動きを見せる。
縄張りを持った雄以外のイカは群れを形成して、水槽内をほぼ乱れることなく行動している。2日夜から3日にかけて、産卵礁にはフジの花のような房状の白い卵塊ができ、今後、別の水槽に移して観察を続けるという。
時岡さんは「昨年夏にスルメイカでの実験もしたが、ヤリイカの方が穏やかで動きがきれい。暗い中で白いイカを眺めていると癒やされる」と話す。さらに「縄張りをつくる行動も昨年の実験で分かったこと。縄張りを持てない雄が子孫を残すための戦略もみていきたい」としていた。
8日までは土、日曜日、祝日も開館。入館無料、午前10時~午後4時。(今井正一)