【上ノ国】文化庁の委託を受けた調査チームが同町沖で20日から行っていた、明治初頭に町大安在沖で沈没した薩摩藩建造の洋式軍艦「昇平丸」の初年度海底調査が26日で終了した。チームリーダーで、九州国立博物館の佐々木蘭貞研究員は「海底面の状況などの貴重なデータを得ることができた。来年度以降の調査に向けて、情報解析に力を入れていきたい」と意欲を見せている。
昇平丸は1854(嘉永6)年に完成した国産2隻目の洋式軍艦。明治維新後は輸送船として活躍したが、1870年に同町沖で沈没した。
これまで地元の有志が、潜水士による調査を行ったことがあるが、本格的な海底調査は今回が初めて。調査チームは期間中、悪天候だった24日を除いて連日地元の漁船に乗り込み、サイドスキャンソナーと呼ばれる音波探査装置を使って、海底の状況を細かく記録していった。
25日には町総合福祉センタージョイ・じょぐらで、町民を対象とした調査報告会(町教委主催)を開催。約50人の町民が熱心に耳を傾ける中、佐々木研究員が調査状況や今後の見通しなどを丁寧に解説した。
同研究員は「今回は海底の状況を探るのが第一目的だったが、天候にも恵まれて十分なデータを収集することができた。来年度以降は潜水調査などを行って、船本体や積み荷などを発見したい」と話した。また、「昇平丸に関する情報を知っている人がいれば、ささいなことでも知らせてほしい。皆さんの協力が発見への大きな後押しになる」と呼び掛けた。
地元の有志で構成し、昇平丸の慰霊碑建立や模型作成などの活動を繰り広げてきた「上ノ国浪漫1854」のメンバー、古川尚樹さん(57)は「しばらく休止状態だったが、地域を盛り上げるためにも活動を再開し、昇平丸の発見へ協力していきたい」と話していた。(小川俊之)