函館少年刑務所(小野記忠所長)は21日、函館港に停泊中の職業訓練船「少年北海丸」から受刑者が逃走したとの想定で訓練を実施した。今年4月に愛媛県の刑務所作業場から受刑者が脱走した事件を受けて初めて取り組んだ。函館海上保安部が海に飛び込んだ受刑者を、函館西署の警察官と刑務所職員が船から岸壁に逃げた受刑者を探して確保した。
少年北海丸は全国で唯一の職業訓練船で、出所後に海技士の資格取得を目指し、受刑者がエンジンやかじ取りなどを訓練する。刑務所からバスで西ふ頭に停泊する船に向かい、1回の訓練で受刑者10人前後が乗船する。
乗船する受刑者は行状が良く、残りの刑期が短いなど一定の基準がある。ただ、4月に脱走があった松山刑務所大井造船作業場でも、審査を通った受刑者が逃走した。万全を期して関係機関と連携し、脱走者を確保する訓練を企画した。
訓練では、肌色の作業着を着た2人の受刑者役が船上から逃走。船首から飛び込んだ受刑者は、海保の巡視船おくしりがゴムボートに引き上げ確保。岸壁で刑務所側に引き渡した。
もう1人の受刑者役は、船の後方から岸壁に走って逃げた。駆け付けた西署の警察官に特徴を伝え、手配するとともに、刑務所の職員も市内各所に配置して取り押さえた。
参加した刑務所職員は「実際に発生すれば逃走者だけでなく、船上にいる受刑者への対応も必要。(警察や海保に)早く正確な情報を伝えることが大切だと感じた」と振り返った。
小野所長は「市民の皆さんに不安感を与えないよう、訓練を生かしたい」と話していた。(深津慶太)