東日本大震災の発生から6年を迎えるのを前に10日、道内で唯一死者が出た函館西署管内で、津波を想定した訓練が行われた。函館朝市やJR函館駅、ホテル関係者の計約100人が参加し「あの日を風化させてはならない。増える海外からの観光客らへの安全策も詰めなければ」と防災への心構えを改めた。
訓練は、午後2時に三陸沖でマグニチュード9・0の大地震が発生、すぐに大津波警報が発令されたと想定。朝市では、屋外スピーカーで日本語と英語、中国語、韓国語の録音テープで近くの高層ホテルに避難を呼び掛けた。函館駅でも改札口付近で職員がハンドマイクで避難誘導した。同署によると、目立つトラブルはなかった。
講評で函館朝市協同組合連合会の井上敏広理事長は「毎年1回でも、多くの団体が協力して訓練を行うことは重要。最近は海外からの観光客が多くなり、(災害時に)どう対応すべきか考えなければならない」。同署の林大輔地域・交通官は「北海道新幹線開業や外国人観光客の増加に伴い、駅前に多数の人が訪れ、東日本大震災と同規模の災害が函館で起きた場合、一斉に避難することで大きな混乱も予想される。被害拡大を未然に防ぐため、訓練を通じて震災への備えを確認してほしい」とした。
避難先のフォーポイントバイシェラトン函館の水野昌輝・経理部長は「ホテルは13階建てで45メートルの高さがあることから、震災当時は延べ2300人の避難客を受け入れた」と振り返り「訓練の積み重ねでノウハウは蓄積されていく」としている。
函館朝市で食堂に携わる高橋芳和さん(63)は「浸水被害の嫌な記憶があるが、訓練に参加すると自分の気が引き締まる。『ツナミ』は海外の観光客にも理解してもらえるので、万一には身振り手振りで避難を案内したい」と話した。(田中陽介、半澤孝平)