函館被害者相談室は5日、京都アニメーション放火殺人事件で亡くなった渡辺美希子さん(当時35歳)の母、達子さん(74)と兄、勇さん(45)を講師に招き「想いと願い」と題して講演会を開いた。2人が当時の思いや被害者支援の重要性などについて語った。
2019年、京都市伏見区の京都アニメーション第1スタジオで36人が亡くなり、32人が重軽傷を負う放火殺人事件が発生。美希子さんは複数のアニメ作品で美術監督を務めるなど中核スタッフとして活躍していた。講演会では達子さんと勇さんが、事件の第一報を受け取った時からの心情などを語った。
達子さんは事件直後を振り返り「自らも苦しい思いをしているのに、私たちのことを思って対応してくれた社員らに感謝している」と話した。
勇さんは事件発生後、情報が集まっていくにつれて「昔からアニメ好きだった自分のせいでこのような結果になってしまったのではないか」と葛藤することもあったと話した。事件後自律神経の乱れや精神的負担で体調不良が続く日々を送っていたと明かし、「カウンセリングを通じて感情の整理がついた」とカウンセリングの有効性について語った。
達子さんは「誰もが自信を持って生きていける社会ならば、このような事件が起こらなかったのでは」とし「つらかったり、苦しかったら『助けて』と言える人間関係を持ったまま大人になってほしい」と訴えた。(中島遼泰郎)