【江差】町教委は、江差港内に沈む旧幕府軍の軍艦「開陽丸」に関する今年度調査事業を8月下旬から実施する。潜水調査や、開陽丸記念館の展示資料(遺物)分析と環境調査、海底遺跡の三次元モデル作成に向けた実地研修、水中遺跡調査の普及啓発活動を予定している。
文化庁の水中遺跡保護体制を充実させる調査研究事業の一環。同庁が昨年3月に刊行した発掘調査の手引書「水中遺跡ハンドブック」を活用しながら、掲載された実践例に基づき調査を進める。潜水調査は約1年ぶり。事業費500万円を専決処分で予算処置している。
潜水調査は、海底の大型船体をむしばむフナクイムシ(貝類)対策のため1989年にかぶせた銅網の有効性と、船体の保存状態を確認する。昨年採取した銅網のサンプルは30年余りが経過し、炭酸カルシウムの被膜に覆われており、フナクイムシが嫌う銅イオンの溶出は適正ではないのではないかと懸念された。遺跡周囲の海水を採取し、銅イオンが溶出しているのか分析などを行う。
24年度には、船体とその周辺の海底の様子を三次元モデルで作成することを計画しており、その前準備として今年度はモデル作成に必要な水中写真撮影と情報処理技術の取得を目指した実地研修を、周辺自治体の水中遺跡担当者を対象に行う。実施時期は1月下旬~2月上旬ごろを予定。
調査を担当する小峰彩揶学芸員は「今年の調査で銅網の効果があるのか、船体がどれくらい劣化しているのかを、科学的な分析で証明したい」と話し、「海底に船体があることを知っている町民は少なく、普段は見えないところにあるので、将来は3Dモデルにして誰もが見えるようにし、周知発信していきたい」と意気込んでいる。(入江智一)