市立函館博物館友の会理事で、北海道史研究協議会会員の木村裕俊さん(67)=函館市東山=はこのほど、函館のまちの原形を築いた人たちの活躍をオムニバス形式でまとめた「願乗寺川物語」を自費出版した木村さんは「先人の功績や人生観、時代感に触れてもらえれば」と話している
木村さんは江差町生まれ鉄道建設技術者として活躍し、2008年に定年退職函館に戻り、歴史学に力を入れ、13年に初期の松前家の家史を記した「新羅之記録(しんらのきろく)」を現代文に訳して出版し、函館文化会が郷土史研究を表彰する神山(こうやま)茂賞奨励賞を受賞した
本のタイトルとなっている第1編は、江戸末期に亀田川を分流させ、人工の「願乗寺川」を開削した僧侶の堀川乗経と土木技術者の松川弁之助、そして願乗寺川の生涯をつづった
青森から渡った堀川乗経が浄土真宗の布教に苦労する中、亀田川の氾濫による水害と箱館の水事情が悪いことで、松川弁之助とともに亀田川から人工の川を引き入れることを考えた現在の梁川町から十字街(末広町)までの約4キロを堀り、飲料水を確保人々の暮らしを潤わせたが、人口増加によって水質が悪くなったことなどで役目を終え、埋め立てられた現在は高砂通となっている
木村さんは古地図などを調査し、川のルートや構造、功績、記念碑、埋め立て工事までをまとめた「願乗寺川は今の函館が発展した大きなきっかけであったことを忘れてはならない」と話す
第2編は木村さんが「まちづくりの起点で別格的な存在この人を外すことはできない」と話す高田屋嘉兵衛北方開拓や箱館の土地開墾を行い、繁栄に導いた業績を紹介している第3編は経済発展に尽力した豪商杉浦家で、初代の長男が病死したことで2代目杉浦嘉七を継ぐことになった「井原忠三郎」を取り上げた第4編は公園や学校、病院など社会資本を充実させた渡辺熊四郎の一代記
木村さんは「大勢の人が資料の提供や、後押しをしてくださったおかげ出版でき、恩返しができたと思う市民に読んでいただき、函館の未来を考える機会としてくれれば」と願う
A5判、193ページ税込み2160円市内の主な書店で発売中問い合わせは木村さん(TEL0138・55・0384)へ(山崎純一)