函館出身の大道芸人ギリヤーク尼ヶ崎さん(90)が21日、函館市若松町に残る生家の建物付近で記録映画の撮影用に大道芸を披露した。撮影を知った市民ら約20人が見守り、若き日に大道芸を見た原点と言える路上で、「じょんがら一代」など4演目を披露した。
新型コロナウイルスの影響で道内を含む青空公演の開催ができない中で、ギリヤークさん本人が監督として記録映画「原点へ。そして生きる。」(仮題)を撮影中。秋田県能代市で両親の墓参後、90歳の誕生日の19日に函館入りした。
ギリヤークさんの家族は1955年ごろまで函館に住み、若松町には両親が営んでいた菓子店「紅屋」だった建物が残っている。今回は弟の尼ケ崎光春さん(80)も約40年ぶりに来函し、「懐かしいね。昔は近所に遊び仲間がたくさんいましたから」と話した。
ギリヤークさんは「大道芸人として進むようになったのも函館の街で育ったから」などと話し、函館在住時、自宅近くで大道芸を見たことや白川軍八郎の三味線の音色に出合ったことが芸の道につながったと語った。
撮影では三味線をかき鳴らす仕草を見せる「じょんがら一代」、バラを持って踊る「よされ節」とおなじみの演目が続き、紅屋があった頃を懐かしんだ近所の女性から、いたわりの声をかけられる場面も。刀のつばを使う「果たし合い」ではきれのある力強い動きでチャンバラを表現した。最後の「念仏じょんがら」では母の遺影を胸にばけつで水をかぶった。見守った市民から「ギリヤーク」「日本一」と掛け声が飛んだ。
近年はパーキンソン病などを患い、5月には心臓のペースメーカーの交換手術を受けたばかり。黒子の紀あささんによると、この日の踊りでは数年ぶりに草履を履き、化粧も手を借りずに終えることができたことからも体調の良さがうかがえたという。
DVDは秋以降の完成を予定し、予約販売を受け付けている。詳細は(https://kino.shopselect.net/)へ。(今井正一)