幼少期に函館で育ち、現在は埼玉県在住の日本画家、柴田香代子さん(69)が制作し、市青函連絡船記念館摩周丸(若松町)で2013年から展示されている函館港の歴史風景を紹介する銅版画「はこだてロマンティックビュー」がこのほど、予定していた10点がそろい、15日からコンパス甲板で公開が始まった。これを機に、エスキース(下絵)展がJR函館駅(若松町)2階のいるか文庫前で開かれている。江戸末期の箱館や北洋へ向かう独航船、現在の函館港などが並ぶ。
同館を管理・運営するNPO法人語りつぐ青函連絡船の会主催。13年に同館が第三セクターから市に移管されて10年を記念し、コンパス甲板(4階屋上)から見える函館港の景色を音楽評論家の湯川れい子さんが「はこだてロマンティックビュー」と命名。同時に、同法人の白井朝子副理事長と幼なじみという柴田さんが「函館港の形と明治期のようす」など銅版画(エッチングプレート)6枚を制作し、設置した。
その後「北洋へ、出港の合図を待つ独航船」「車両航送が始まった頃の若松埠(ふ)頭」などが追加され、当初予定していた10点がそろった。函館山山麓や函館どつくなど、プレートの絵と現在の様子を見比べることができる。「時間は絵で表現できないが、現実の景色と合わせることで、時の流れを感じられる」と柴田さん。
絵画展は同駅を訪れる観光客に、約300メートル先にある同館にも足を伸ばしてもらおうと開催。絵は甲板のエッチングプレート(横40センチ、縦30センチ)よりやや大きいA3ノビ判相当(横48センチ、縦33センチ)で、日本語と英語の解説付き。明治期に荷物の積み降ろしでにぎわうベイエリア、現代の豪華客船、西部地区の坂道や台風15号(1954年)の荒波など日本画独特の繊細な表現で楽しめる。また、絵はがきも販売開始した。
柴田さんは「摩周丸は『港町函館』を示すランドマーク。若い人が歴史を描いた絵を見て、将来の函館を考える機会になってくれれば」と話し、同館、絵画展の来場を呼び掛けている。
絵画展の会期は7月上旬までを予定。絵はがきは1枚100円で日本語の解説付き。10枚セットもあり、同文庫と同館で発売中。(山崎純一)