函館視力障害センターの教官で、全盲の水泳選手、山本浩二さん(29)が2020年の東京パラリンピック出場を目指し、ボランティアチームのサポートを受けながら練習に打ち込んでいる。今年4月に前任地の埼玉県所沢市から赴任。仕事との両立を図りながら函館の地で飛躍を誓っている。
9月上旬に東京辰巳国際水泳場で行われたジャパン水泳競技大会では、S11(視覚障害)クラスの男子100メートル背泳ぎで1分21秒88をマークし優勝、同50メートル自由形は31秒61で2位に入る好成績を残した。山本さんは「練習の成果を出し切れずに終わったので満足はしていない」と反省を口にする。
東京パラリンピックまで3年余りとなる中、当面は強化指定選手に選ばれることが目標。まずはアジアパラ選考会を兼ねる来年3月の静岡記録会で結果を残そうと強化練習に励む。
愛知県豊橋市出身。6歳の時に水泳を始めたが、疾病による視力の低下が進み、中学3年で競技継続を一時断念。筑波大学在学中の24歳の時、現在のコーチの勧めもあって障害者水泳を始めた。
前任地では、東京都内のプールに1時間半かけて通い、1人で練習を続けていたが、函館に赴任して練習環境が一変した。パラリンピック出場を目指す山本さんを応援しようと職場の同僚ら有志が立ちあがった。函館地区障害者スポーツ指導者協議会や函館水泳協会、市体育協会などが連携し、5月に「チーム山本」を結成した。
メンバーは水泳指導歴40年以上のコーチや理学療法士、障害スポーツの有識者ら10人がおり、練習メニューの作成から筋力トレーニングの指導、泳法の助言・アドバイスなど競技に集中できるよう全面的に支援している。視覚障害者水泳ではターンやゴールの合図を専用の棒で知らせる「タッピング」があり、練習ではメンバーが交代で補助役を務める。
チームの代表を務める近藤良一さん(市体育協会理事)は「山本さんが目標達成できるよう、物心両面でサポートしていきたい。パラスポーツの普及にもつなげたい」と話す。
山本さんは「みんなが仕事をしながらサポートしてくれている。期待に応えられるよう全力を尽くしたい」と決意を語った。(鈴木 潤)