函館市は、人口減少や空き家問題が深刻化している市内西部地区を住宅地として再整備する方向で検討に入った。同地区には建築基準法上の接道要件を満たさず、建て替えできない物件も多く、市が区画整理的な手法を用いて、数年度をかけて大規模に整備を推進していく考えだ。市はおしゃれな住宅街として売り出し、富裕層や若者らの定住につなげたい考えで、函館のブランド力向上への貢献にも期待を込めている。
市が昨年6~12月に西部地区と中央部地区の51町で実施した空き家実態調査によると、1人も住んでいない戸建てやアパートは計891棟で、このうち放置すれば倒壊の恐れや衛生上の懸念がある「特定空き家」は250棟あった。
市都市建設部によると、西部地区は1つの区画が大きく、区画内に住宅が密集している場所があるが、そうした建物は現行法の基準を満たしていない場合が多く、建て替えができないのが現状。さらに20坪(66平方メートル)程度の狭い敷地の家は、利活用しにくいため売却も難しい。
また、歴史の古い地区だけに、建物を相続した所有者が市外に居住していたり、自分が建物を所有していることすら知らなかったりするケースもあり、空き家解消のネックとなっている。
市は人口減を背景に、郊外に拡大した居住区域を中心部などに集約してにぎわいを取り戻す施策に本腰を入れる。湯川は函館アリーナ、花園・日吉は函館フットボールパーク、亀田は新たな統合施設など各地に拠点施設を整備しており、函館発祥の地で観光客からも人気が高い西部地区でも、住宅地の再生に着手する。
手始めに、本年度から同地区で住民の意向や接道要件を満たしていない建物などの調査を実施する考え。調査結果を踏まえた上で、住民や事業者とのマッチングを図り、空き家解消と住宅地再生に向けた事業計画を策定する。
(山崎大和、金子真人)
■接道要件 建築基準法第43条の規定により、建築物の敷地は原則として幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接しなければならない。この要件を満たしていない建物は再建築不可物件となり、建て替えができない。