臥牛山５月１７日・ハンセン病特別法廷
ノルウェーの医師が発見した「らい菌」による感染症で、手足の神経がまひ、皮膚が変形し、顔面がひきつるハンセン病。投薬で治る菌で、決して恐ろしい病気ではない▼しかし、先進国を目指す明治政府はハンセン病患者を「国恥」とし、療養所に強制隔離。医学的根拠がないまま予防法ができ、２０年前の法律廃止まで“差別扱い”され、ハンセン病への偏見や差別が広がった▼問題は、憲法で公開の法廷で裁判を行うよう定められているのに、療養所での特別法廷。社会の目が届かぬ隔離施設での法廷では、審理の正当性を疑いたくなる。元患者で死刑になった人もいるという▼政府と国会が隔離政策の過ちを認めてから１５年、三権の一つ、最高裁もようやく謝罪と反省を表明。「憲法的価値の表現に大きな役割を担う裁判所が、期待を裏切ったことは痛恨の思い」と。来月の「追悼の日」にも出席して猛省する▼療養所を何度も訪れている僧侶は「皆さんを差別する心があります」と打ち明けると「差別するのは知っています。差別をなくすのではなく、今何ができるかを考えてください」と言われ、胸が痛くなったという。ハンセン病法廷は、跡を絶たない差別や人権侵害に重い課題を突きつけた。（Ｍ）
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