臥牛山4月30日・囲碁七冠を達成
臥牛子が全身麻酔で肝臓がん切除手術をした際、囲碁の夢を見ていた。そこに打つと大石が死んでしまう、包囲網からどう脱出するか…。6時間後、麻酔から覚めても碁の話をしていたという▼井山裕太さんが26歳の若さで棋聖、名人、本因坊など初の七冠に輝いた。幼少期にテレビゲームで囲碁を覚え、右利きだが、左手で打つ。アマ六段の祖父が直感や創造性と関係がある右脳を鍛えるため、左打ちを勧めた▼祖父に手を引かれ座布団を重ねて座り、目いっぱい手を伸ばす。碁盤の向こう側まで届かず、打つたびに立ち上がる。小5の時、史上最年少でのプロ入りを目前にしながら大一番で負け、対局室から出た瞬間にわっと泣き出した▼強さの秘訣(ひけつ)は独創性。頭には二つの碁盤があり、一つは普通の棋士が持っている碁盤。もう一つは独創的な手を編み出すという碁盤。脳科学者の茂木健一郎さんも「脳の新しい可能性を示した」という▼東大などで囲碁を授業科目に取り入れている。総合学習の時間などで囲碁を教える小学校もある。推定310万人といわれる囲碁人口の頂点に立った井山さん(それでも世界では6位)。次は人工知能の「アルファ碁」との対決に夢が膨らむ。そして世界制覇だ。(M)