臥牛山3月31日・公衆電話から「お母さん」
おととし埼玉で行方知れずとなった15歳の女子生徒が、公衆電話から弱弱しい声で「お母さん」とSOS。家での呼び名を問い直すと「うん、そう」。失われた2年の空白に胸が痛む▼23歳の男に、千葉と都内のアパートの部屋に監禁されていた。鍵がかかっていない日、男が外出した隙にアパートから逃げ出したという。保護された時、持っていたのは現金170円と、学校に行きたくて毎日繰り返し見ていた中学校の生徒手帳▼2年前、女子生徒に「弁護士だが、送ろうか」と声を掛け、連れ出し監禁。男は大学生で卒業後の就職先も決まっているため先月、都内に転居した。女子生徒に「迷惑かけてごめんなさい。しばらくは帰らない」という手紙まで書かせていた▼容疑者にも親がいるだろう。息子の暮らしを見に行く機会はなかったのか。少女を監禁している生活が2年も続いていたのに。「都会の落とし穴」に気づかなかった▼アパートから逃げ出して駆け込んだ駅の公衆電話が「命綱」に。2年も経つというのに家の固定番号を覚えていた。スマホに夢中な若者は固定番号を忘れ、高齢者は携帯番号を忘れる時代なのに。季節はふた巡り、女子生徒に「15の春」が戻ってきた。(M)