臥牛山3月29日・開業の裏で
「駅前にこんなに人がいるのを初めて見たよ」と、興奮気味に知人が話す。北海道新幹線の開業で26、27日の函館・道南はまさにお祭り騒ぎであった。嵐のような2日間がまたたく間に過ぎ去り、新幹線はこれから当たり前の日常になる▼ただ、光の裏には必ず影がある。今回のダイヤ改正で道内の無人駅8駅が廃止になった。道南では八雲町に1駅あるが、大半は道北や道東。新幹線の恩恵をほとんど受けられない地域だ▼その中の一つ、石北線の「旧白滝駅」は利用客が女子高校生1人のいわゆる秘境駅。彼女の卒業を待っていたかのように、25日で69年間の歴史に幕を閉じた。他の駅も利用客がいなくても、地域住民が駅を毎日掃除していたりと大切に扱われてきた▼道南でも、いさりび鉄道誕生の陰でJR直営の江差線が姿を消した。札幌に延伸する15年後には函館・道南から「JR」の在来線が消える運命が待っている▼「新幹線開業の裏で大切なものが失われている」。27日のテレビ番組で、秘境駅のノートにこんな文言が書かれているのを見た。何かが生まれれば何かを失う。新幹線開業は見知らぬ誰かの犠牲の上に成り立っていることをあらためて認識し、最大限に活用しよう。(C)