臥牛山3月28日・オードリとテロ
“銀幕の妖精”のオードリー・ヘップバーンの映画「ローマの休日」は何度も見た。ベルギー生まれで晩年、ユニセフ親善大使として内戦や飢饉に苦しむ国々を駆け巡った▼アンネ・フランクと同じ年。ナチス占領下で死の恐怖におののいた。22日の空港・地下鉄テロで31人が死亡し、邦人2人を含む200人以上が負傷。生まれた街の大惨事をいかに嘆いていることか▼ブリュッセルはEUやNATOが本部を置く「欧州の都市」で、観光立国。自爆犯は地元の兄弟らしく、パリのテロと関係しているようで、イスラム国(IS)を名乗るグループが「十字軍連合に暗黒の日々を」と犯行声明▼ベルギーといえば身長60センチの「小便小僧」。17世紀ごろ、街の破壊を企てた反政府軍の爆弾の導火線を小便で消した少年に由来する。小便小僧をテロに対抗する象徴として、団結を呼び掛けるツイッターも。難民への排斥機運も高まる▼日本も例外ではない。5月に開催される伊勢志摩サミットが標的になりかねない。テロの犠牲者は世界で年間3万人超。ヘップバーンは「大勢の子どもが死んでいるのに、誰も語ろうとしない。大人の最大の恥であり悲劇だ」と怒っているだろう。(M)