本格的な観光シーズンが始まるのを前に、函館・近郊では昨年に続いて新たなホテルが続々と営業を始める=別表。北海道新幹線開業で多くの旅行客が訪れた昨年は宿泊施設の不足が浮き彫りになっただけに、観光関係者は受け入れ態勢の強化を歓迎する一方、ホテル業界では競争激化を懸念する声が上がっている。
リオ&パコホテルズ(札幌)は、函館市大森町のコンドミニアム型宿泊施設「スパ&カーサ函館」を隣接する「ホテルパコ函館」と一体化させ、27日に「ホテルパコ函館別亭」として開業。29~67平方メートルの広めのツインルームをPRし、需要の取り込みを狙う。
京王電鉄子会社のリビタ(東京)は、ベイエリアで改修中の遊休施設2棟を「ハコバ函館ザ・シェア・ホテルズ」(34室)と名付け、5月26日に営業開始。2段ベッドのドミトリータイプやテラス付きの客室などを用意し、国内外の幅広い客層の利用を見込む。
8月には千歳町に函館初のカプセルホテル(104室)が誕生。来年は函館国際ホテル(大手町)と湯の川プリンスホテル渚亭(湯川町)の増築工事が完了するほか、札幌国際観光(札幌)が大手町で建設を進める「函館センチュリーマリーナホテル(仮称)」が開業する予定だ。
新幹線開業に沸いた昨夏は、函館市内で宿泊施設の予約が取りづらい状況が続いた。日銀函館支店の調べによると、市内宿泊施設の収容人数の上限を約1万4000人と想定した場合、昨年8月は1日当たり1400人ほどの「取りこぼし」が発生したという。
今年は函館・近郊で計500室程度の客室が増える見込みで、五稜郭タワーの大場泰郎営業部長は「ホテル開業が呼び水となり、昨年予約が取れずに函館を敬遠した旅行客が訪れるきっかけにしてくれることを期待したい」と歓迎する。
一方で、ホテル関係者は複雑な心境をのぞかせる。函館ホテル旅館協同組合の遠藤浩司理事長は「受け入れ人数の増加は函館アリーナなどで開催される大規模大会の誘致にもプラスになる」とした上で、需要が低下する冬場について「競争激化で料金の安売り合戦になると、経営体力のない企業に影響が出ないか心配だ」と話している。(山田大輔)