IT(情報技術)を駆使した新しい働き方の創出などを目指す研究拠点「ワークラボ函館」(函館市五稜郭町)が今月から本格稼働し、データ収集などの活動をスタートさせた。人口減少や高齢化の課題先進地域である函館を研究土台に、函館発の最先端事業の創出や高度情報処理技術者の育成が期待されており、地元の高等教育機関の受け皿としても注目されている。
ワークラボ函館は函館市が企業誘致を進め、ネットリソースマネジメント(東京、高野昌樹社長)と地元企業のハコレコドットコム(山田圭飛CEO)が共同で設立した。首都圏企業と地元企業がタッグを組んで市内に事業所を立ち上げるのは初めてのケースで、3者は6日付で連携協定を締結。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用した新たな産業や雇用の創出に向けて協力する。
関係者を招いて7日に開かれたキックオフ会では同所が公開され、室内の湿度や温度、二酸化炭素濃度などのデータが取得できる環境センサーや、会話の要約などが可能な会話内容解析マイクなど、IT技術をフル活用した生産性向上の取り組みなどを紹介した。
同所はこうした働く空間から生まれるさまざまなデータを収集することで、新しい働き方の創出を目指す。新型コロナウイルスの感染拡大によって社会における働き方が大きく変わっていく中、「観察」を起点とした空間の見える化で函館の、ひいては全国の地方都市が抱える課題の解決を模索していく。
高野社長は函館について「オフィスや製造業、病院や各種交通機関に農漁業をはじめとした一次産業と、あらゆるワークスペースが存在する」と強調。「IoTにより働く空間の新しい姿を創出し、函館のような可能性のある地方をサポートしたい」と話している。(野口賢清)