函館市内で12~14日に開かれた「第78回日本消化器外科学会総会」で、NTT東日本(東京)による遠隔手術社会実証試験が行われた。東京と函館アリーナに設置した日本製手術ロボットを同社の専用回線でつなぎ、ロボットを遠隔操作して胃の切除手術を実施。同社が商用実験を行った距離としては過去最長となる東京―函館間約740キロでの通信ネットワークを検証した。
国内では少子高齢化や医療資源の地域格差など、山積する医療における課題解決策の一つとして、ICT(情報通信技術)活用が期待されている。厚生労働省は2018年に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を示し、19年に遠隔地の指導医が現地の医師に代わって部分的に手術操作を行う「遠隔手術支援」もオンライン診療に含めると明記。日本外科学会などが準備と研究を進め、同社も実証試験への支援を行っている。
実験では、医療用ロボットの開発などを行うメディカロイド(本社・神戸市)製の手術支援ロボットを使用。遠隔拠点(函館)に設置したサージョンコックピット(医師がロボットを操る操作台)と、手術拠点(東京)のオペレーションユニットを専用回線で接続。函館にいる外科医師がコックピットからロボットを遠隔操作し、人工臓器モデルの胃の切除手術を実施した。
その結果、通信と画像処理で計0・025秒の遅れがあったことを確認。日本外科学会が22年に策定した「遠隔手術ガイドライン」で定める遅延時間の総計(0・1秒以下)をクリアした。
同社第四バリュークリエイト部の馬塲延和担当課長は「NTTグループとしても新しいネットワークの研究開発に取り組んでいるので、それらを地域医療に提供していきたい」としている。(長内宏人)