酒造会社の上川大雪酒造(上川管内上川町、塚原敏夫社長)などは28日、函館亀尾小中学校跡地に酒蔵を建設すると発表した。函館に日本酒の醸造所ができるのは54年ぶり。主に地元の酒米と水を原料とした地酒を開発するほか、函館高専(伹野茂校長)と同酒造が酵母や発酵などの共同研究を行う方針で、2021年4月着工、同11月の醸造開始を目指す。(山田大輔)
新たな酒蔵は、同酒造の親会社「緑丘工房」(札幌)と、同高専の活動を支援する地元企業が出資した新会社「函館五稜乃蔵」(漆嵜照政社長)が、市と長期の土地貸借契約を結んだ上で約3億円を投じ建設。延べ床面積は約1000平方メートルで、酒蔵にはショップやバー、同高専の研究施設を併設する。
年間生産量は4合瓶換算で約10万本を想定。杜氏(とうじ)はこの日、同高専の客員教授に就任した同酒造の川端慎治副社長が務める。
同酒造は17年に設立。帯広畜産大学の構内にも日本酒の醸造所を設け、経営する酒蔵は函館で3カ所目となる。
一方、菜の花から採取し培養した「菜の花酵母」を開発した実績を持つ同高専はこれまで、函館産の酒米「吟風」を使った酒の製造を兵庫県伊丹市の酒造メーカー「小西酒造」に委託。ただ、真の地酒を目指す関係者にとって、酒蔵の建設は長年の悲願で、昨年10月に上川大雪酒造を訪れ、交渉したことで誘致が実現した。市内で日本酒の製造拠点が置かれるのは、日本清酒(札幌)が本町にあった工場を閉鎖、移転した1967年以来。
同高専で記者会見した上川大雪酒造の塚原社長は「日本酒の醸造研究に取り組んできた函館高専とプロジェクトを進められるのは大変光栄。市民が愛してくれるような酒をつくりたい」、伹野校長は「発酵、醸造分野での人材育成が地域の活性化につなげられるよう全力で進めたい」とそれぞれ抱負を述べた。
酒蔵の新設で雇用の創出にも期待が懸かる。会見に同席した谷口諭副市長は「六次産業化の推進、観光資源の活用など多方面に大きなインパクトのある事業。市としてもできる限りサポートしたい」と話した。