函館市宝来町の老舗和菓子店、千秋庵総本家(松田俊司社長)が、菓子製造・卸売業の鈴木栄光堂(岐阜県大垣市、鈴木伝社長)に買収されたことが2日、分かった。同社の後継者難を受けたもので、鈴木栄光堂の100%子会社として、店舗や従業員約40人の雇用は継続される。
買収は9月27日付。後継者探しに苦慮していた千秋庵総本家が、事業承継を支援する企業を仲立ちとして鈴木栄光堂と協議を進め、方向性が一致したことから今回の買収に至った。松田社長は今後、会長となって店の営業に携わる。
鈴木栄光堂は1877年(明治10年)創業。今年で創業140年を迎える老舗菓子店で、テーマパークやアミューズメント施設向けの菓子で高いシェアを持つ。大阪や東京のほか、上海やベトナムにもグループ会社を持ち、国内外の事業展開に力を入れている。
同社は今回の買収について「日本国内でも、また海外においても『北海道』というブランドはとても魅力であり、千秋庵の歴史をみても今後事業を展開していく過程で強みになる」と強調する。
千秋庵総本家は1860年(万延元年)創業。百貨店内の店舗を含めて市内に4店あり、「元祖山親爺」やどら焼きなど、手間と時間をかけたこだわりの和洋菓子を売りとしている。
松田社長は「6代目として社長になってから25年、後継者を育てるのが課題だった。函館での菓子作りを守ることができて、今は正直ほっとしている」と話している。(野口賢清、山田大輔)