【知内】町涌元沖の海底で約1年間熟成させたウイスキーなどの酒類が27日、引き揚げられた。北海道海洋熟成(札幌、本間一慶社長)の取り組みで、大半は特産の生ガキに合う酒として人気を集める、町のふるさと納税の返礼品に活用される。
札幌でバーを経営する本間社長(45)が、2015年から海洋熟成の試験を行い、20年に同社を設立した。海外の沈没船から酒が引き揚げられたという話題に関心を持ったのがきっかけだという。波が与える振動が味に影響し、4カ月ほどで変化が生まれ、1年ほどで味覚のプロでなくても分かるほどの違いが生まれるという。現在は近隣の木古内町沖を含め、道内10カ所の海域で事業展開し、科学的な成分分析も行い、裏付けのある付加価値を生み出している。
知内では、上磯郡漁協の協力を得て21年度から取り組み、水深約25メートルの海底の漁礁にくくりつけて熟成。知内の返礼品は生ガキに合うようウイスキーではスモーキーな味の銘柄が中心で、本間社長は「海洋熟成によってアルコールの揮発が抑えられたり、煙味やうまみが分かりやすくなったりする。海域の海産物との相性も高まる」と話す。
今回は昨年沈めた5ユニット(1ユニット60本)分の返礼品のウイスキー、シャンパンのほか、引き揚げた中には道南産のワイン、日本酒も含まれる。瓶は洗浄後に乾燥させ、返礼品分は順次、発送となる。来年発送分の酒類は近くの海域で既に熟成を開始している。
同社は近く、海域の水温や塩分濃度を調べたり、波の速度を測る加速度センサーなどが付いた機器を設置する実証試験を始める。本間社長は「自然の力を科学的に読み解き、趣味、嗜好(しこう)ではない納得のいく味の根拠を示したい」と話している。(今井正一)