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(荒井三津子さん・暮らしのパレット)「気持ちのかたち」

 歩けなくなった義父はリハビリを目的に3週間の予定で入院した。だが、肺炎などを併発して2週間で逝ってしまった。車いすを押したのはたった1日、洗濯はたった2度。嫁には看病も介護もさせず、見事な終わり方だった。
 姑が他界してからこつこつと片付けをはじめ、最終的には、今はやりのミニマリストとでもいうのだろうか、必要最低限のモノだけで1人暮らしを謳歌(おうか)した。90歳の2DKのマンションは整然としており、残された家族が判断に困るものは何一つなかった。
 本は趣味だった書道関連のものしか残っていなかったが、私と夫の著作は別の戸棚に分けてあり、孫娘たちからのとるに足らない旅の土産もどれも大切に保管してあった。親なら、祖父なら当たり前かもしれないが、他のモノがほとんどない部屋ではそれだけが際立ち、スポットライトを浴びているようで心打たれた。
 合理的な義父は包装紙や空き箱など不要品は何でも捨てた。それなのに私が贈った日本酒の桐箱と京都のお菓子屋のかわいい箱が2つずつ残っていた。これには参った。私にもらったというただそれだけで捨てなかったに違いない。1人息子の家族を心から愛してくれていたのだと思う。
 戦前は神田にある鶏卵問屋の若旦那だった義父は、おすし屋さんでもおそば屋さんでも、まずは熱燗にだし巻き卵を注文した。無宗教で見送ったが、毎朝卵を焼くたびに義父に手を合わせようと思う。(生活デザイナー)

      暮らしのパレット

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