北海道の形はなんと美しいのだろうか。他の都府県から離れているのだから当然かもしれないが、それにしても曲線が印象的である。わが家には北海道の形をしたお皿がある。先日はアラスカから豪快な来客があったので、釧路の柳ダコと北海道産のチーズを山盛りにしてまずは乾杯した。
今、大学で「北海道の自然」というタイトルの講義を担当しているので、この大地をさまざまな角度から眺め直している。津軽海峡はブラキストン線と呼ばれ、それを境界線に生物相が異なる。ヒグマもエゾリスもこの海を超えて南下はしなかった。長万部と黒松内と寿都を結ぶラインはブナの北限で、エゾマツの南限でもある。このことは、かつてそのあたりが海だったことを示唆している。
目に見えないラインが北海道の歴史を雄弁に語ってくれている。洞爺湖、支笏湖、摩周湖など透明度を誇る美しい湖はカルデラ湖だ。激しい火山活動が作り上げた見事な造形である。優美な駒ケ岳も決して穏やかではない歴史が作り上げた。高い山脈はそこにしか住めなくなった動植物を守り、季節の移ろいをドラマチックに見せてくれている。
火山の爆発や大地震のたびに多くを失いながら美しく豊かな北海道が作り上げられたかと思うと目に映る自然が違って見えてくる。そして大地は眠れる獅子である。イキモノなのだということを忘れてはならない。先週末に再び大きな台風に襲われた。避けられない自然災害に忸怩(じくじ)たる思いである。(生活デザイナー)(14日の掲載が漏れていました。おわびします)