楽しい展覧会があった。札幌の陶芸家の友人が企画したもので、陶芸家仲間だけでなく木彫家や漆工芸作家など総勢27人の箸置きだけの作品展だった。アーティストたちのこだわりからか、あえて箸置きとは言わず、箸まくら展と名付けたあたりが粋である。
実は会場に行くまで少し心配だった。どんなに箸置きが小さくても、27人もの作品を、それほど広くはないギャラリーに展示することは想像ができなかったからだ。しかし会場に入った途端に心が躍った。作家たちの個性が小さい作品に溢れていたのだ。日頃大きな器やオブジェを作っている彼らなら、箸置きなど残った材料で簡単に作ることができるはずだ。だが、どれもこれも作家の個性と作為が感じ取れるものばかりだった。決して片手間に作った「端切れ」ではないことがよく分かった。小さい作品だからこそ丁寧に、大作と変らない情熱とプライドが込められているように見えた。
箸の文化に関心を寄せ、箸置きコレクターでもある私は会場で短い時間お話をさせていただいた。箸置きはいつごろ、なぜ使われるようになったのか、箸文化と箸置きの歴史をたどるセッションはお客さまも交えて実に楽しかった。箸は毎日使う道具だが、箸置きを使う習慣はそれほど浸透していない。昨今は箸置きダイエットというのも話題である。函館でもこんな展覧会を開いてはどうだろうか。そのときはぜひ私も仲間に入れていただきたい。(生活デザイナー)