夫がチェコの大学で名誉学位を授与されるというので同行した。彼の記念講義の後、私も日本文化を紹介する時間をいただいた。昨年末のポーランドに続き、海外で「日本の食卓文化」について話をする機会を得たことは幸せなことだったが、多々考えることが増えたのも事実である。
まず、学生たちの熱心な姿勢に感動した。夫の講義にたくさんの質問が飛び交い、議論が白熱したのは当然かもしれないが、彼らにとって専門外である私の話にも興味深い質問や意見が続いたことは意外であった。それが何であっても、学ぶ機会は大切にしようという彼らの積極性ゆえだと思う。この積極性こそ、日本の学生に欠けている。時代のせいか、いや教育する側の情熱の欠如もあるだろう。反省すべきは大人だとまた思ってしまった。
そして2つ目に考えたことは、これからの自分の仕事である。私の話に熱心に耳を傾けてくれる世界各地からの学生たちを見て、日本でもっと語ろうと強く思った。彼らが日本の食卓や生活文化に興味を持ち、日本との親善が深まることはうれしいが、それは私の本来の仕事ではない。今回もキモノを2着持参したが、平素日本ではキモノを着る機会はほとんどない。楽であること、簡単であることを優先してきた結果だが、食に関しても同じである。
今一度、日本の暮らしについて考え、その魅力を広く丁寧に語り継ごう。東欧での経験は私に少なからぬ勇気を与えてくれた。(生活デザイナー)