車にも、貴金属にも興味はない。ゴルフもダイビングもしないし、仕事以外の旅行はしない。何の趣味もない。ただ困った「癖」がある。モノが捨てられない。捨てる美学が浸透し、整理整頓、上手な収納は、すでに現代人の必須テクニックなのに、私にはできない。
20年以上前に他界した義母が残した食器や書籍、キモノの整理を先延ばしにしていたら、一人暮らしをしていた義父が6月に亡くなり、家具など全てわが家にやってきた。ついに逃げ切れなくなり、目下片付け作業に追われている。だが遅々として進まない。
なぜ私はこんなにもモノが捨てられないのだろうか。買ったときのうれしさや価格が忘れられない。プレゼントはその相手の顔や状況が浮かぶからだ。結局、ただ右から左に移動させる程度で、生活空間は狭まる一方である。それでも着ない洋服はバザーに出せるようになったが、問題は紙袋。写真はわが家の紙袋のほんの一部である。サイズ別に分類し直してみたが、膨大な体積は変わらない。
やはり「捨てるしかないか」と意を決しても、「いや、いつか何かに使えるはずだ」と葛藤は続く。その現実をフェイスブックに載せたところ、同じ悩みの方から興味深いご意見がたくさん集まった。ブックカバーに再利用する方法や寄付するなどいろいろな声を聞いているうちに気が付いた。私はキレイな紙袋が好きなのだ。集めて手の届くところに置きたい。典型的なコレクターである。だから捨てられない。納得。(生活デザイナー)