「明石の子ども施策を具現化した拠点です」―。今年1月にオープンしたJR明石駅前再開発ビル「パピオスあかし」内で、明石市政策局シティセールス推進室広報課の吉田貴之課長は開口一番こう強調した。
駅前の一等地に建つビルには、市の窓口サービスが受けられる「あかし総合窓口」、妊娠期から幅広く子育てを支援する「あかしこども広場」、誰もが本に親しめる「あかし市民図書館」、にぎわいあふれるイベント空間「あかし市民広場」を整備。駅前の人通りは2年前に比べ4割増え、子ども連れが多く年齢層が若返った。
子どもに手厚いまちは、市内全28小学校区に「子ども食堂」を開設する計画。民間主導で既に市内17カ所に開設しており、市福祉局こども総合支援部の佐野洋子部長は「子どもの居場所と気付きの拠点にする。地域みんなで子どもを支えたい」と狙いを語る。子どもに異変があれば、地域で情報を共有し、早期に行政の支援につなぐことができる。
市は、来年4月から中核市へ移行する。2019年4月には、児童相談所(児相)を市独自に開設する予定だ。中核市で児相を設置しているのは横須賀市と金沢市だけで、明石市が設置すれば全国で3番目となる。児相の設置で子どものSOSに素早く対応し、児童虐待を防ぐ。また、さまざまな事情で保護者と暮らせない乳幼児の里親委託率(里親で育つ子どもの割合)100%を目指す。国は乳幼児の里親委託率を75%以上に目標を掲げており、市は全小学校区に里親を配置する考えだ。
全国的に珍しい活動が注目されがちだが、市には影の部分も存在する。人口流入に伴う待機児童問題が深刻化。待機児童数は547人(今年4月1日現在)と関西ワーストになっている。15年12月には、新たな部署として「待機児童緊急対策室」を設置し、抜本的かつ緊急的な対策に乗り出した。保育所の受け入れ枠を16年度から2カ年で約4割増にあたる2000人分拡充しており、市政策局政策室の岡田武総合戦略担当課長は「今後も保育ニーズは一定程度高まる」と見通す。
市は総合戦略で「明石のトリプルスリー」として、19年の人口30万人、年間出生数3000人、本の貸し出し冊数300万冊を掲げ、目標達成に向け着々と取り組みを進める。「選ばれる明石、さらに住みやすいまちへ」―。戦略の実現は一気に現実味を帯びてきた。(山崎大和)(第3部おわり)