2030年度末予定の北海道新幹線の札幌延伸後にJR北海道から経営分離される函館線の函館―長万部間(147・6キロ)に関し、鉄道貨物を維持する方向となり、道南の沿線自治体の首長からは歓迎する声が出ている。今後は有識者会議を設置し、費用負担の在り方や人員確保が議論される見通しで、各首長は課題の行方を注視する考えだ。
国土交通省と道、JR貨物、JR北海道が26日、札幌で開いた協議会で、鉄道貨物を存続することが妥当との方針を確認した。有識者会議が2025年度中に最終的な結論を出すとしている。一方、旅客輸送をめぐっては道と沿線自治体が協議を続けているが、一部を除き廃線やバス転換を望む意見が大半を占める。新幹線延伸で並行在来線が貨物専用線路線として残れば、全国初のケースとなる。
函館市の大泉潤市長は「鉄道貨物輸送はわが国の食料基地の役割を担う北海道で欠かすことのできない輸送手段の一つであり、機能を維持する方向性が妥当であると確認されたことは大変喜ばしい」と強調。「費用負担の在り方をはじめ、整理すべき課題が多くあることから、引き続き協議、検討を深め、課題解決が図られることに期待したい」とコメントした。
七飯町の杉原太町長は「一次産業振興の観点から、鉄路を存続する方向で動いていることは、非常に歓迎したい」とした上で「JR北から引き継ぐ施設の保有主体がどこになって、誰が保線を担うのか、今後の議論を注視していきたい」と話す。「路線が残ると、トランスイート四季島(JR東日本の豪華寝台列車)など観光列車が走る可能性も出てくるだろう」と観光需要にも期待を寄せる。
北斗市の池田達雄市長は「貨物路線が維持されるのは大変良いことだと受け止めている。問題なのは路線をどのように維持してくのかということ。誰がどうやって負担するのか、負担割合はどうなるのか。旅客をどうするのかも含め、課題は多い」と話す。
森町の岡嶋康輔町長は「貨物路線を維持する方向性が決まったことは、旅客の議論を見据えた上で一つの判断材料になるだろう。貨物の話も旅客の話も全て同じテーブルに乗せた上で話を進めてほしい」としている。
どの市町も路線が存続する場合の財政負担には否定的とみられ、地元がどの程度関わりを持つことになるのかが今後の焦点となる。(山崎大和、今井正一、野口賢清)