死者2166人を出す未曽有の大惨事となった函館大火から、21日で82年を迎えた。同日午前、市内大森町の函館大火慰霊堂で殉難者83回忌慰霊法要(函館市仏教会主催)が執り行われた。遺族や消防関係者ら計64人が参列。犠牲者の冥福を祈り、惨事を後世に伝えるとともに防火の心構えを改めた。
法要では、市仏教会(百目木隆一会長)の僧侶が読経する中、参列者が焼香。祭壇に向かって目を閉じて手を合わせた。
当時、大森町の自宅が全焼し、親戚3人が犠牲になった野島邦夫さん(89)は「毎年法要に来ている。あの日は湯の川まで逃げて助かったが、川の両岸にたくさんの遺体があったのを覚えている」。曾祖父が犠牲になった市内の船越志美さん(82)は「両親の遺志を継いで法要に必ず来ている。自分が元気なうちは毎年ここに来たい」。京都出身で函館念法寺副住職の山本浩介さん(35)は一般参列し「犠牲者に思いを寄せて、復興に尽力された先人らへの感謝の気持ちも忘れずにいたい」と話していた。(田中陽介)
函館大火 1934(昭和9)年3月21日午後6時53分、住吉町から出火。瞬間最大風速30メートル以上の猛烈な風で火は広がり、当時市内の3分の1(416万平方メートル)を焼き尽くした。死者2166人、行方不明者662人。罹災人口は10万2001人。身元不明者679人が無縁仏として函館大火慰霊堂に納骨されている。