函館市縄文文化交流センターは3日、トークセッション「中空土偶『茅空』の魅力」を開いた。約40人が来場。元文化庁主任調査官の土肥孝さんと中空土偶を再現したことがある陶芸家安部郁乃さんが講演した。
土肥さんは冒頭、中空土偶の国宝化の原点として、昨年亡くなった考古学者の坪井清足氏から「縄文時代の国宝をつくれないか」と言われたことを挙げ、当初から縄文出土品で中空土偶が候補にあったことを明かした。現在の国宝土偶5体の中で、手がなく頭部も割れた状態のものは中空土偶のみ。土肥さんは「(著保内野遺跡)周辺に破片がないことを(再発掘で)調べ、割られていることが大事だと証明し、手や頭がない状態が当たり前と納得した上で国宝になっている」と述べ、思い入れのある1体だとした。
また、中空土偶以外の国宝4体についても解説。青森県八戸市出土の「合掌土偶」は「中空土偶の作られた時期と1年も2年も時間差はない。作った連中は互いに話をしたくらい(の間柄)」とし、津軽海峡を挟んで共通の文化圏が広がっていたことを示唆した。
続いて安部さんは、中空土偶の実測図を基にした制作過程を紹介。精密な文様の配置などから相当の集中力が必要だとして「(制作した縄文人は)手際も良く、頭の中に文様があったのだろう」などと話した。
縄文時代に関心を持つ函館ラ・サール中学校1年の門脇義紘君(12)は「茅空の国宝指定まで、砕けた部分がないのか時間をかけて裏付けのための発掘していたことに興味を持った。いろいろな土偶があるのでどういう年代に作られていたのかもっと知りたい」と目を輝かせていた。
国宝のレプリカ(複製)5体が集結した企画展「縄文土偶サミット」は24日まで。入り口では、安部さん作の中空土偶が置かれ、手で触れることもできる。(今井正一)