中空土偶の国宝指定10周年を記念した講演会が11日、函館市縄文文化交流センターで開かれた。日本を代表する芸術家岡本太郎について著作がある札幌の美術評論家柴橋伴夫さんが「岡本太郎が掴んだ太陽 縄文の美の発見」と題して講演。縄文時代に魅せられた太郎に迫った。
柴橋さんは「芸術は爆発だ」の言葉に代表される太郎の生き様について否定的な考えを持っていたといい、旭川出身の画家で故・難波田龍起の評伝を書く過程で太郎について再認識し、「太陽を掴んだ男 岡本太郎」の執筆につながった。
太郎は1951年に東京国立博物館で初めて接した縄文土器に衝撃を受けて、年代分類が中心の考古学的な視点ではなく、芸術的価値を見い出した。その背景の一つとして、パリ留学時代に出合った文化人類学者のマルセル・モースを紹介。「モースは、アジアやアフリカは土俗的でヨーロッパよりも価値が低いとする文化の階層性を否定した。太郎が縄文と弥生を平等に見ることができたのはモースの考えがあったからだ」と述べた。
また、68~69年にメキシコのホテルで製作した巨大壁画で、現在は渋谷で見ることができる「明日の神話」を紹介。原爆がテーマで、広島、長崎、第五福竜丸という3つの被爆をテーマに描いた作品で柴橋さんは「太郎は平和を大切にしていた人」とし、争いもなく自然とともに生きた縄文時代の平和な心に関心を持ったのではないかとした。(今井正一)