函館の歌舞伎役者で二代目市川団四郎さんが主宰、指導する函館子ども歌舞伎の第12回公演(函館子ども歌舞伎を育てる会主催、函館新聞社など後援)が28日、市芸術ホールで開かれた。1年8カ月ぶりの舞台で5~16歳の24人が出演。しっかりとしたせりふ回しや所作でほぼ満員の客席を引きつけ、盛んに拍手や声援が飛び交った。
「絵本太功記 十段目 尼ケ崎閑居の場」は、武智光秀や加藤正清らの勇ましい武者姿に「待ってました」と大向こうが掛かり、決死の覚悟で出陣する光義にすがりつく初菊の姿は涙を誘った。子ども歌舞伎の十八番となる「白浪五人男 稲瀬川勢揃いの場」は初舞台の子も多く、微笑ましい与力と捕り手たちの姿や堂々たるせりふを決めた5人の盗賊に大きな拍手が送られた。
「三十三所花の山『壺坂霊験記』沢市住居より谷底まで」では、幾度となく繰り返した遊び人雁九郎と沢市の一人二役の早変わりで楽しませたほか、夫婦の掛け合い、米屋の番頭ら3人のコミカルな場面も会場を沸かせた。雁九郎・沢市役の佐々木亜珠さんは「達成感ともう終わっちゃったと悲しい気持ちがある。笑うところを笑ってくれ、拍手もうれしかった」とし、献身的な妻、お里役の古谷果乃羽さんは「いまは楽しかったということしかない。これからもお客さんを楽しませたい」と話していた。
幕間には子どもたちのインタビューや市川さんによる作品解説があった。また、旧後援会時代から事務局長などとして子ども歌舞伎の活動を支え、今年5月に亡くなった廣瀬等さんをしのび、市川さん、育てる会の佐藤観生会長から感謝の言葉がささげられた。
初めて子ども歌舞伎を鑑賞した市内本通1の森田美姫さん(70)は「大人でも難しい役を子どもたちが演じ、衣装もきれい。壺坂は涙が出ました」と喜んでいた。(今井正一)