子どものころ、蚊を媒介とする病気は日本脳炎かマラリアと聞かされた。蚊取り線香で退治したり、蚊帳の中で寝たものだ。70年ほど経って、恐ろしいジカウ
イルス感染症(ジカ熱)が広がっている▼このウイルスが最初に発見されたのは
69年前、ウガンダの「ジカの森」。樹木が茂り、多種の鳥が生息し、米国やフランス、ドイツなどから学生たちが訪れている▼発熱や発疹などの症状は軽いといわれるが、妊婦が感染すると脳の発達が不十分な「小頭症」の新生児が産まれる可能性が高い。五輪を迎えるブラジルで発症して以来、34の国・地域に拡大、小頭症の新生児は約4000例に上る▼ブラジル大統領は「ジカ熱との戦い」を宣言、国軍22万人が防疫に当たっている。コロンビアでは女性が妊娠するのを6~8カ月遅らせるよう勧告。エルサルバドルは2年間、妊娠を避けるようアドバイス▼米国では性交渉によって感染した例も。決して“対岸の火事”ではない。ジカ熱を媒介するヒトスジシマカは日本列島にも生息。政府は検査試薬の配備を急いでいるが、決定的な治療薬はない。函館空港は啓発ポスターで予防策を訴える水際作戦を展開。まずは蚊の発生源を消滅することが大事。(M)