臥牛山2月18日・企業城下町
「函館は企業城下町であった」。数年前に聞いた、ある高等教育機関准教授の解説を思い出す。青函連絡船、北洋漁業、造船。海にかかわる巨大な産業が市民生活を支え、まちの活気を維持してきたが、現在は造船のみになった▼16日に発表された2015年国勢調査の速報値で、函館市の人口は10年比1万3010人減の26万6117人になった。道内で最も多く人が減り、周辺の渡島桧山もつられて人口が減少。地域の衰退が進んでいる▼端的に言えば死亡数が出生数を上回る「自然減」の激しさゆえだが、少子高齢化はどこの地方も同じ。ここで問題に挙げたいのは転出人数が転入人数を上回る「社会減」で、いい職がない、給料が安い、じゃあ函館を出よう―の負の連鎖に陥っている▼連絡船、北洋が健在だった1960~70年代に、この2業種に続く産業を見つけられなかったことが現在の人口減を招いている。当時の行政も経済界も探したであろうが結果は伴わなかった▼市は定住人口の減少を新幹線開業による交流人口増加で補う考えだが、産業を支える人が少ない街に、観光客が来る量には限界がある。新たな企業を呼び、新たな城下町を作るしか方策はないのかもしれない。(C)