今年もいい酒ができますように―。函館の地酒「函館奉行」の原料となる酒造好適米「吟風(ぎんぷう)」の稲刈りと新酒醸造祈願祭が8日、市内米原町の水田で行われた。醸造元や生産者ら約15人が集まり、銘酒が生まれるよう願いながら、黄金色に実った稲を刈り取った。
地酒づくりは函館の一般財団法人北海道食品開発流通地興(谷沢広代表理事)が企画し、今年で4年目。亀尾地区の水田で実った吟風を原料に、小西酒造(兵庫県伊丹市)が純米吟醸酒を醸造。同社所有の酵母に加え、函館高専の小林淳哉教授の研究グループが開発した菜の花酵母を用いて、2種類の酒を作っている。
今年の作付面積は昨年と同じ約1・6ヘクタール。5月下旬に田植えを行った後は台風10号の影響も受けることなく順調に生育した。生産者の一人、橋田孝一さん(68)は「実入りは最高の状況」と太鼓判を押す。
この日は小雨がぱらつくあいにくの天候の中、谷沢代表や同社の庄司明生営業本部長のほか、市農林水産部の藤田光部長らが集まった。神事を行った後、鎌を使って稲を刈り取り、出来栄えに自信を深めた。
11日までに稲刈りをすべて終え、今年は9トンの収穫を見込む。庄司本部長によると、12月上旬から仕込みに入り、低温で長期間発酵させた後、年明けに新酒が出来上がるという。
谷沢代表は「生産者と相談して周辺の土地を借りるなどして作付面積を拡大し、ある程度潤沢な量の酒をつくりたい」と意気込むとともに、「生産者も高齢化が進んでおり、次の世代に引き継げる仕組みづくりを進めたい」と話していた。(千葉卓陽)