函館高専(但野茂校長)は、海洋に関する最新の研究拠点となる「海洋工学ラボ」を市国際水産・海洋総合研究センター内(弁天町)に開設した。同センターに工学系の学術研究機関が入居するのは初めてで、津軽海峡での潮流・海流によるエネルギーポテンシャル(潜在能力)を生かした発電装置の開発を進める。
高専は函館市と共同で、同海峡の強い潮流・海流を使った海洋エネルギー利用に関する研究を進めてきた。2013年度に、戸井・汐首岬沖合で流速や潮の流れを調べる基礎調査を行い、季節ごとの流れの特性を把握した。
ラボでは、宮武誠准教授(41)=海岸海洋工学=が中心となり、小規模発電システムの開発に向けた研究に具体的に着手。実用化には、低速でも安定的に電力を供給できる装置開発が必要だという。また、数値シミュレーションを使い、周辺海域の漁業などに及ぼす影響について検討する。人工的に潮流を起こすことが可能なセンター内の大型実験水槽を利用し、装置の模型を水槽内に入れてデータを取る実験も続けている。
剱地利昭准教授(熱流体工学)も、海洋ドローン(無人飛行機)による同海峡での潮流・海流の調査に取り組む。
宮武准教授は「津軽海峡は他の海域に比べ一方向流で、発電がしやすいメリットがある。発電装置に流れの力が伝わりやすいので、潮流発電に有利だ」と話す。
同センターには民間企業のほか、公立はこだて未来大、道総研函館水試、北大北方生物圏フィールド科学センター、北大大学院水産科学研究院が既に入居。指定管理者の函館国際水産・海洋都市推進機構は「工学系が入ってくれたのは非常にありがたい。今までに経験のない分野の研究が進むのでは」と歓迎している。(山崎大和)