日銀は3日、新しい紙幣の発行を始め、同日道南の金融機関にも新紙幣が到着した。一方、温泉施設など一部店舗では券売機の新紙幣への対応準備が進まず、更新作業の遅れもみられている。
紙幣の刷新は2004年以来。新しい肖像は、1万円札が「近代日本経済の父」と称される渋沢栄一、5千円札が女子英学塾(現・津田塾大学)を創設した津田梅子、千円札が「近代日本医学の父」と呼ばれる北里柴三郎にそれぞれ交代した。
道南の金融機関にはいち早く新紙幣を手にしようと市民が来店。このうち、道南うみ街信用金庫七重浜支店(加藤正樹支店長)では午前10時ごろには新紙幣が到着。窓口には、午前から新紙幣での預金払い出しを求める市民が足を運んだ。
20年ぶりとなる新紙幣に、函館市美原2の会社員、長谷川拓人さん(25)は「これまでの紙幣に比べ、算用数字の表記が多くなり、金額が分かりやすくなった。肖像画やホログラムなども一新されて新鮮」と話した。
同市杉並町の遺愛女子中学高校は、5千円札の肖像となった津田梅子を支えた妹・余奈子が函館在住時に前身の遺愛女学校に通い、この縁をもとに同校は昨年、津田塾大と高大連携協定を締結。同高の井上記一教頭は「女性がいきいきと活躍する時代にふさわしく、喜ばしいこと」と歓迎。「本校とも関わりのある人物に注目が集まる機会になれば」と期待する。
一方、発行とともに、道南の店舗事業者は新紙幣への対応に追われている。北斗市東前の「東前温泉しんわの湯」は入浴とレストランの券売機が新紙幣に対応しておらず、担当者は「すでに業者に発注しているが、作業は1、2カ月待ちの状況。できるだけ早く対応したい」とする。「ブルス」(函館市昭和3)が運営する「高温源泉 湯の箱こみち」(同)、「天然温泉 七重浜の湯」(北斗市七重浜8)も自動券売機は未対応で「当面はフロントで対応する」としている。
函館元町ホテル(大町)の遠藤浩司社長(63)が運営する同町のコインランドリーは3カ月前に両替機1台の更新作業を発注。システム更新を終え、新紙幣への対応が済んだが、ホテル内の自動販売機2台はまだといい「しばらくはフロントでの両替で状況を見たい。更新作業は新型コロナウイルス禍が明け、客が戻る中での出費。台数が多いところは対応が大変になるのでは」と話した。(飯尾遼太、神部 造、中島遼泰郎)