料理研究家と一緒に主宰している教室で糠(ぬか)床作りと糠サンマの仕込みをした。イキのいいサンマは手に取るとピンと反り返り、光り輝いていた。季節の魚こそ最高のぜいたくだと思う。
価格が気になるところだが、それは農作物も同じである。野菜であれ魚であれ、生き物である以上、生産量も品質も、自然環境の影響を直接受ける。スーパーに行けば、季節を問わず何でも買える時代になったので、自分たちが食べるものが大海原や大地の産物であるということをなかなか実感できなくなってしまった。
今年北海道は、赤潮の大打撃を受けているが、学生たちに危機感はない。食べるものには困らないからだ。毎年食生活論の講義で、食糧の安定供給の難しさと対策について力説しているが学生たちの反応は弱く、歯がゆく思っていた。だが、その理由が先日わかった。調査の結果、「食」には特に関心がないという学生が意外なほど多かったのだ。自分で料理するくらいなら空腹でも我慢するとか、食べる時間があるなら寝ていたいという学生の多さにがく然とした。外食には関心があるが、自ら作る気がないので、素材に関心がないのは当然だ。
年々無関心層が増えているのが気になる。素材や調理道具を選ぶ楽しさ、自ら調理する達成感、食べる幸福感、それらを知らなければ素材をいかに確保したところで豊かな食生活は維持できないだろう。食糧確保と同じくらい、若い世代の食への関心育成が必要ではないか。実はそれが一番難しい。(生活デザイナー)