冷夏かと心配していたら突然の猛暑。北海道の各地で30度を超える日が続いている。知らない者同士でさえ「暑いですね」とあいさつを交わすほどである。本州に比べればこれくらいで音をあげては恥ずかしいが、突然の暑さはつらい。さらに近年は湿度も高い。北海道人は急な暑さと湿度が大の苦手なのだ。今年はお盆過ぎまでこの暑さが続くようだが、そう聞くとなんだか寂しくなる。あっという間に秋風。それから冬までは一直線である。
冷房システムのなかった時代はどうやって過ごしていたのだろうか。簾にうちわと扇子、玄関先の打ち水と縁側の風鈴、どれも風情があるが、厳しい暑さにはどれほどの効果があったのだろうか。だが、そんな夏ならではの小物や知恵を大切にしたいと思う。今は室温は年中自在に設定できる。スマホやパソコンの平らな画面に向かいさえすれば、時間も空間も簡単に超えることができる。イヤホンからは好きな音楽だけをいつでも聞ける。ヒトもモノも環境も均一化した。引き換えに失ったものはないのだろうか。
季節の移ろいは時の流れを見せてくれる。植物は日照時間と温度の変化を感じ取って花を咲かせ、葉の色を変える。それを毎年見事に繰り返す。すでにススキは穂を開く準備をしている。コオロギたちも鳴き始めた。自然の変化に敏感でありたいと思う。流れる時をしっかり感じることで自らの老いも穏やかに受けとめられるのではないかと私は思っている。秋は近い。(生活デザイナー)