十勝の農園に行ってきた。友人が実家の畑をハーブ園にして、化粧品や酢などを作って楽しんでいる。いろいろなハーブがあったが、一面のハマナスは特に印象的だった。
私の幼い日の記憶にも強烈にハマナスの花がある。低木だからだろうか、子供の視線に飛び込む大きくて色鮮やかな花はまさに古里の花、思い出の花と呼ぶのにふさわしい。だが明治のはじめ、ハマナスが香水の材料として栽培され、工業製品になっていたことは知らなかった。海外から安い香料が輸入されるようになって事業は衰退したようだが、そのまま続いていれば、北海道を支える大産業になっていたに違いない。
北海道のホームページを見ると、ハマナスは「野生で力強い」「花の色が鮮明で、葉も美しい」「生命力が強くて育てやすい」などの意見で、1978(昭和53)年に北海道の花に指定されたとある。全く異議なしである。もっと広く日本中に、いや世界中に北海道のハマナスの魅力が知れ渡れば良いのにと思う。
本州のお菓子には「北海道産の小豆使用」、佃煮には「北海道産の昆布使用」、パンには「北海道産の小麦使用」などのただし書きがよくある。「北海道産」は選(え)りすぐられた特別感を伝える言葉になっているのだ。ハマナスは香りだけでなく、ビタミンCも豊富なのだから、化粧品やビネガー、お茶など幅広い領域で「北海道産のハマナス使用」というゼッケンを背負って王道を走って欲しい。ビジュアルでは誰にも負けないのだから。(生活デザイナー)