函館生まれで、小学校から高校までは旭川。本州でも暮らしたが、子育ての大切な時期は函館だった。両親は釧路にも数年住んでいたので根っからの道産子だと自認している。
だが大学で「北海道の自然」という講義を担当することになり、いろいろ調べ始めてがく然とした。北海道のことをあまりに知らない。津軽海峡を挟んで動物の様相が大きく異なることを最初に報告したのはブラキストン。彼の名にちなんで津軽海峡をブラキストン線と呼ぶ。そのブラキストンさんが函館に20年も住んでいたとは知らなかった。クラーク博士が北海道にいたのはわずか1年、北海道の森林保護政策には消極的で、米づくりより欧米式の食生活を奨励したなど、北海道の近代史に関わった登場人物が繰り広げたドラマは実に面白い。
最近、北海道のチーズについて学ぶ機会があった。自分ではなかなか美味しいものを選べず、近年は敬遠していたのだが、今回紹介された8つの工房のチーズはどれも驚愕の味だった。牛の育て方はもちろん、たゆまぬ研究、そして発酵という自然の力も相まって北海道のチーズは世界に肩を並べるまでになったと思う。
思えば北海道米もこんなに美味しくなった。先人たちが苦労を重ねて大地を切り開き、多くの方々の研究と努力が今の北海道を支えている。もっと北海道を知りたい、そして広く紹介したいと思うようになった。今さらの北海道愛に少々照れている。(生活デザイナー)