◇自然と生きる
また大きな地震があった。昨秋の北海道の大地震をはじめ、熊本、東北、神戸と未曾有(みぞう)の悲劇を思い出した。津波警報に怯(おび)えるも大被害はなく安堵(あんど)したが、この安堵が実は危ない。警報が出ても大丈夫だと高をくくる人が増えそうで怖い。警報が出たらすぐ行動したいが、足腰の弱った95歳の母と大型犬を連れて、どこにどう避難できようか。深夜ならなおさらである。これは私だけの問題ではあるまい。
札幌市内と近郊ではクマの目撃情報が今年も多い。以前、撃ったクマの胃の中にはどんぐり一個しかなかったという話を聞いたことがある。空腹のクマは木の実やベリー類を含む、本来彼らの生息域にあった餌を探して里に降りてくることはあっても、人間を襲う目的でさまよったりはしないという。
かつてアラスカで過ごしたことがあるが、クマに注意して暮らすことは常識だった。クマがいる環境に人間が住んでいるからだ。銀行やスーパーに子熊が迷い込んだ話はよく聞いた。外に置くごみ箱は、クマに荒らされないように厳重にふたをすることは周知のことだった。とはいえ、クマとの遭遇は怖い。共存はかくも難しい。自分たちが立っている地面さえ大きく揺れて崩れる。海も川も氾濫して大暴れする。北海道はこの5月、とんでもない猛暑に襲われた。さて夏はどうなるのだろうか。予知できぬ自然の脅威を前に、その一員であることを忘れず、謙虚な生き物でありたいものだ。(生活デザイナー)