狭い庭は毎年、ササとドクダミ、ミントの仲間が繁茂し、歩くのも難しくなる。これではいけないと昨年から少しずつ手入れをするようになったが、どんなに狭くても庭の管理は簡単ではない。それほど植物の生命力はすごい。だが何より、私たち夫婦にはガーデニングに向かない根本的な問題がある。
専門は違うが共に動物について学び長く生物学を教えてきた。植物はよく知らない夫はその成長を面白がる。私も雑草さえかわいく思える。剪(せん)定すべき枝さえ、小さい芽や葉がついていれば切れない。原種に近い一重のバラはそんな私たちをあざ笑うかのように勢力を広げ、狭い庭のあちこちから尋常ではないとげだらけの細い幹を伸ばしている。歩くのに邪魔な上、とげが危ない。
今年こそ処分するぞと意を決し、雪解けを待って掘ってみた。ところがどの幹も驚くほど根が深く、全部繋がっている。そのたくましさは感動的ですらあり、根切り作業は中止。支柱まで立てて保護してしまった。そのとげに引っ掛かるるたびに情けをかけたことを悔いていたが、今たくさんのかわいいつぼみをつけている。
30年以上前、ある素敵な女性にバラの小さい苗をいただいた。樺太から持ち帰り大切に育てていらしたという。庭があるならぜひ育ててほしいと託された。長い歴史を持つそのバラが今年も咲き始めた。とげさえなければ、と思うが、このとげゆえに生き延びてきたのだと思うとまた感動である。植物から学ぶことは実に多い。(生活デザイナー)