同居している母が95歳になった。母は結婚後から私の小学校入学まで函館で暮らし、幾度かの転勤のあと、60歳を過ぎてまたしばらく函館で生活したので、大の函館贔屓(ひいき)である。
30年前、父を見送ってからも元気だったが10年前、背中の手術をしてから歩行が少し難しくなった。だが母の部屋は2階。介護制度の支援を受けて階段、風呂、トイレ、台所に手すりを付けた。さらにレンタルの手すりをベッド周りや玄関にいくつかお借りしている。それが良かったのだと思う。今も家の中では家族の助けなしに自由に歩き、すべて一人でやっている。
火を使う料理はしないが、食器の片付けなどは母の仕事である。週2回は午前10時から午後3時までのデイサービス。そのほか週に2度はリハビリ専門の施設に午前中通い、その夕方は鍼(はり)とマッサージの先生に来ていただいている。予定のない日は週に2日しかない。95歳にしては忙しすぎないかと心配してくださる方もあるが、きちんと身繕いをして出掛け、家族以外の人に会い、会話をすること、体を動かすことは何よりの健康法だと家族も母自身も今は考えている。
わが家はいろいろなアドバイスを受けながら介護保険をフルに活用させていただいているが、介護の恩恵を受けずに不自由を我慢している高齢者が多いと聞く。「お世話になりたくない」人もあれば、仕組みや手続きが分からない人もいるようだ。高齢者に優しい地域と社会づくりを急ぎたい。(生活デザイナー)