食事文化塾を主宰している。今年初めての勉強会はいつも通り何品かの料理を学び、参加者全員で食卓を整えた。節分も近いので今回は古い食器をいくつか使ってみた。
わが家には料理研究家だった義母が残した陶器や漆器がたくさんある。それなのに私も好きな作家の作品を長年かけて集めてしまった。それだけでも収納が大変なのに、私には少々困った趣味がある。リサイクル屋さんめぐりである。探すのは食器。骨董(こっとう)というほどのものではない。こんなにあるのにまだ必要なのかと家族はあきれるが、モノによっては100円かそれ以下である。心ときめくモノに出会ったらいそいそと持ち帰る。ささやかな趣味だと自分では思っている。そしてこれは自分が使うためだけではなく、後世のためでもある。食事文化の保護活動なのだと、古い食器を買うたびに自分の愚行を正当化している。
写真のお椀は昔、旅先のリサイクル屋さんで見つけた。お椀と蓋(ふた)の数が合わない。蓋とぴったり合うものもない。どれも微妙にゆがんでいる。ほこりまみれで積まれていたが、描かれている鷹の目の鋭さが気に入り、交渉の末、破格の値段で購入した。
今回の勉強会で誰もが注目したのがこのお椀だった。実家の納戸や押入れを整理して何か探したいという生徒さんもいらっしゃった。古い食器の魅力が伝わったのならうれしい。古い食器探しも、まんざら悪い趣味ではないと思うのだが、さてどうだろうか。(生活デザイナー)