先日、オーストリア人とドイツ人の若いイラストレータートが泊まりに来た。日本一周の途中である。どこに行きたいかと聞くと本屋だという。二人は小さい本屋も経営しているので、大手の本屋に案内すると飽きずに一日楽しそうに過ごしていた。
彼らはドイツ語で書かれた奥の細道を熟読してその足跡をたどり、キャンプしながら札幌まできた。日本の自然を肌で感じることにこだわり、あちこちの本屋さんや古本屋さんを見て回るという独自の旅の形は実に素敵だった。そして今週はイラストレーターであり、絵本作家としてもチェコで活躍しているMさんを札幌の家に迎えた。悪天候の日も彼女は1人で楽しそうに円山に登り、そこから市内中心部をくまなく歩いたという。3万歩ぐらいだろうと笑っていたがそれ以上だと思う。晴れた日は北大を探索し、木陰の芝生で昼寝も楽しんだようだった。帰る日も朝早くから近郊の自然散策を満喫していた。
旅の目的や方法はいろいろあるが、有名どころを見よう食べようと、どん欲な観光客とこの三人は大きく違っていた。そして三人ともほとんど写真を撮らなかった。いつでもどこでもバシャバシャ写真を撮る私たちは自らの五感で楽しむことより、SNSで発信することのほうが目的になっているかと自嘲せざるを得なかった。自分たちの興味に忠実に大切な時間を使う彼らの旅は実に健全で充実しているように見えた。(生活デザイナー)