(荒井三津子さん・暮らしのパレット)「やさしい時間」

 観光地には必ず見るとこと美味しいモノがある。いや、見るところと美味しいモノがあるところを観光地という。だが、それらに頼り過ぎていてよい時代は終わったのではないだろうか。名所旧跡もグルメ探訪も、繰り返し旅人を呼び寄せる力には限りがあるだろう。信心深いリピーターが神社仏閣を毎年訪ねるのは例外である。
 「時間を作ってでも行きたい」。そういう所こそ、今求められているのではないだろうか。不便でも特段の名所・名物がなくても「行きたい」と思わせる何にかがあれば、人は旅に出る。
 先日、函館のホテルに宿泊した。幸い知り尽くした町である。観光の必要はない。ひたすら部屋で講演の準備をしたのだが、つくづく思ったのは、旅の目的は「時間」だということである。時間があれば旅をする、という意味の時間ではなく、商品としての「時間」こそ、忙しい現代人には何よりうれしいのではないだろうか。
 かつて「優しい時間」という富良野の喫茶店を舞台にしたテレビドラマがあった。お客はミルでコーヒー豆を挽(ひ)く。それは最高の小道具だった。函館のホテルには写真のようなセットがあった。流行作家の気分でパソコンに向かって疲れた午後、私は豆を挽いた。良い香りが部屋中に広がった。今度は仕事を抱えた夫や娘たちを連れてこよう。何よりのもてなしは「やさしい時間」だと痛感した。(生活デザイナー)

      暮らしのパレット

      最新記事

      函館新聞 電子版 お申込み
      ご購読申し込み月は無料

      函館新聞宅配購読お申込み

      お試し(1週間)もございます。

      フリーマガジン「ハコラク」も毎月お届け

      ニュースカレンダー

      紙面ビューア

      9月23日のイベント情報

      北海道胆振東部地震の影響によりイベント中止および延期となっている場合がございますので、詳細は主催者へ直接ご確認頂きますようお願い申し上げます。
      2018 大学進学説明会