日本でも注目が集まっている課題解決型学習(プロジェクト・ベースド・ラーニング、PBL)。その先駆者として入学希望者が殺到しているのが、2000年に開校した米カリフォルニア州の公立校「High Tech High」(ハイテク・ハイ/HTH)だ。抽選式のため、人種や経済状況など多様な生徒が集まる。
なぜ殺到するのか。それは、HTHにはいろいろなものが「ない」からだ。教科書がない。定期テストがない。チャイムがない。教師を「先生」ではなく名前で呼ぶ。その代わり、PBLを通して生徒たちは、一定の制約の下で課題解決のための試作品をつくり、他者に伝えフィードバックをもらうことを繰り返す。
以前、HTHに留学した日本人女性から話を聞いた。「ファミリープロジェクト」なるPBL。自分たちが設定した家族のストーリーを考え、愛の告白の寸劇を行い、赤ちゃんが生まれた場合には実際の重量で作った人形を創作し、その〝赤ちゃん〟を毎日育てた。男女のカップルだけでなく、LGBTなどさまざまな家族が登場。「ほしい未来は自分でつくれる」と高揚したという。
今回学びフェスに登壇したFutureEdu代表理事で、HTHなど先進事例を取材している竹村詠美さんは言う。「〝子どもひとりが育つには、ひとつの村が必要〟というアフリカのことわざを、今こそ大切にしたい」。大学教育へのPBL導入を先進的にけん引した公立はこだて未来大・美馬のゆり教授は「スペースをオープンにすると、マインドもオープンになる」と、学習環境デザインの重要性を解く。PBLを取り入れ人気校となった札幌新陽高等学校の荒井優校長はウィズコロナ時代に問う。「大人こそ本気で学んでいるか、今試されている」と。
人工知能やロボットが生活に浸透する今、人間個々の力が醸し出される学びとは何か。与えられた選択肢から選び、正解でないと減点されるような「知識の処理」では足りない。解くべき課題を見つけ、仮説をひねり、周囲と協働しながら納得解を得る度に加点されるような「対話的で深い学び」。多様性の感受と待つ姿勢とともに、地域一体となり、子どもだけでなく大人も学び続けられる社会をつくっていきたい。(実行委員/まちの編集者 泉 花奈)
「未来の学びフェスin函館2020」(実行委主催)が11月1日に函館市亀田交流プラザで初開催された。未来をつくる学びや教育のあり方について学びフェスを通して得た気付きを、国内外の教育先進事例や教育現場、まちづくり・経済などといった視点から、実行委員がレポートする。