函館市と市内の研究機関や漁協などが連携し魚類の養殖技術確立を目指す「函館市魚類等養殖推進協議会」(会長・嵯峨直恆函館国際水産・海洋都市推進機構長)が、新年度の事業計画を発表した。3年目となるキングサーモン(マスノスケ)の完全養殖事業は、飼料開発や魚病対策などの事業化研究に取り組む。コンブ養殖研究は完全養殖の確立を進める。また、新年度からは成育不漁のウニの畜養試験に取り組み、年2回の出荷を目指すとしている。
今年度のキングサーモン養殖研究は、南かやべ漁協管内の定置網で63匹(雄50匹、雌13匹)の天然キングサーモンを入手。成熟した天然魚46匹(雄42匹、雌4匹)を使い3万2000粒の人工授精を行い、約9000匹がふ化に成功した。3月現在、市国際水産・海洋総合研究センター内の水槽で約8000匹の稚魚を飼育している。
昨年7月には、大森浜沖約1・5キロの地点に10メートル四方、深さ8メートルの浮沈式いけすを水深30メートルに設置。10月まで耐久度調査を行った後、11月からサクラマスの稚魚(400グラム)400匹を飼育し、今年6月に水揚げを予定している。
コンブ養殖研究では、完全養殖技術の確立へ向け、北大大学院水産科学研究院を中心に、道総研函館水試など市内の学術研究機関が連携し、ライフサイクル循環制御型コンブ養殖システムの開発に取り組んでいる。
このほか、新年度からの新規事業では、函館・近郊に生息する成育不漁のムラサキウニや、バフンウニに飼料を与え飼育することで、実入りなどの品質を高め販売価格の向上を目指す。初年度は、函館沖で捕獲した天然のウニを、陸上と海上で配合飼料や天然飼料を与え畜養し、実入り状況などを調査する。陸上試験は市ウニ種苗センター(戸井、えさん漁協)、海中試験は函館沖合のコンブ養殖施設海域または漁港内水域で実施する。
嵯峨会長は「養殖技術の確立は、函館の水産業の将来にとって重要な課題。キングサーモン、コンブ、ウニの三つの柱を軸に着実に研究を進めていきたい」と話している。(小川俊之)